ウイスキーの原料ってなんでしょう?

ビールは大麦、日本酒はお米、ワインはぶどうというのは結構有名なので皆さんご存知ですが、ウイスキーを始めとする蒸留酒(雑に言えばアルコール度数の高いお酒!)って何が原材料なのかあまり知られていないと思います。

実はウイスキーの原材料は、ウイスキーの種類によって異なります。「モルトウイスキー」と呼ばれるものは、大麦を原料に作られます。「グレーンウイスキー」と呼ばれるものは、トウモロコシやライ麦、そして小麦を主な原材料とします。そしてブレンデッドウイスキーと呼ばれるものは、モルトウイスキーとグレーンウイスキーのミックス(そう、だからブレンド!)なので、これらの材料がミックスで含まれていることになります!

モルトウイスキーの原料

まずモルトウイスキーとはなんでしょう?

モルトウイスキーとは、大麦の麦芽だけを原料にし、これを発酵させ、単式蒸留器(ポットスチルとも言います)という装置で2回蒸留して作られたウイスキーのことです。モルトウイスキーは、基本的に個性の強い味わいになるため、そのまま市場には出ず、他の蒸留所のウイスキーと混ぜて商品になることが多くなります。が、一部にその個性の強さを売りにして「シングルモルトウイスキー」という、単一の蒸留所のウイスキーだけで世に出る、人気ウイスキーもあります。

というわけで、このように個性が強く現れるのがモルトウイスキーの主原料が前述の通り大麦なんです。でも、ただ大麦で片付けてはもったいない。もっと原材料について知りたいですよね!?

モルトウイスキーに使われるのは、大麦は大麦でも「二条大麦」という種類なのです。そもそも大麦の種類には、二条大麦と六条大麦、ハダカ大麦があります(場合によっては四条大麦、野生オオムギが加わります)

ウイスキーに二条大麦が使われるのは、二条大麦の穂が通常よりも大きく、でんぷん質が多いから。ウイスキーのアルコールは、麦芽に含まれるでんぷん質を糖に変え、その糖をアルコールに変えて作られるので、でんぷん質が多いと、いいアルコールが作れるというわけなんです。

また、イチローズ・モルトの肥土伊知郎さんは、実は日本で作られるウイスキーのほとんどがドイツ、イングランド、スコットランドでモルトスターという製麦業者が作った二条大麦を購入して原料としていると現代ビジネスにて語っています。

そんな二条大麦の生産国であり有名蒸留じょが集うスコットランドの品種のくくりで言うと、2017年に作られている二条大麦は「コンチェルト」「ベルグレイヴィア」「オクテイヴィア」「オデッセイ」というのだそうです。

最後に少し脱線しますが、麦茶や麦ご飯に使われるのは六条大麦です。二条大麦と比べると穂のサイズが小さいことが特徴です。

なお、ここからはさらに脱線しますが、同じように穀類であるお米を原材料として作られるアルコールに、日本酒があります。そして、日本酒の場合も、原料になるお米はお酒用に使われるものと食べるように使われるものとでは、別々の品種が存在します。

食べる用のものは、でんぷんよりもタンパク質の多いものが使われます。お酒用のものは逆にタンパク質が少なくデンプンの多いものです。ウイスキーに使われる麦の原理と全く同じです。

これは、やはり前述した通り、お酒を作る際にでんぷんが非常に重要であることが一因ですが、一方で「食用にする場合はたんぱく質に含まれる旨み成分が重要視される」ことも一因として挙げられるでしょう。

全く別の香り、味、特徴を持つお酒ですが、原料の面で共通の特徴をもつというのは、なかなか面白いと思いませんか?

グレーンウイスキーの原料

モルトウイスキーに対してグレーンウイスキーのことも簡単に見ていきましょう。

まず「グレーン」とは何か、ご存知ですか?グレーンとは穀類のことです。恐らく多くの方が「グラノーラ(granola)」という単語をご存知かと思いますが、この言葉は穀類を表す「グレーン(grain)」から来ているものです。

つまり、前述の通りトウモロコシやライ麦、そして小麦といった穀類全般を材料にして作られるのがグレーンウイスキーなんです。

ただしモルトウイスキーの部分で説明しましたが、発酵には大麦の麦芽も必要になります。したがって、グレーンウイスキーには大麦が一切入っていない、というわけではありません。

ではなぜ、わざわざ大麦だけでなく別の穀類をウイスキーの原材料にすることになったのでしょうか?「稲富博士のスコッチノート」に面白い記述があります。

未発芽の穀類を加える意味合いは、酒税と原料コストの低減にあった。ウイスキーに対する課税は17世紀から始まったが、18世紀始めのスコットランドとイングランドの合併以来、あの手この手で強化された。原料の麦芽への課税(1725年)、もろみへの課税(1784年)、蒸溜釜の大きさ別課税(1786 年)等である。

引用:稲富博士のスコッチノート 第14章 グレーン・ウイスキー-その1 A.Coffeyまで [Ballantine’s]

なるほどわかりやすいです。「お酒の歴史は税の歴史」と言ってもいいほど、お酒と税金は密接に関わっているのが常ですが、ここでも税がからんでくるんですね。

つまり、税金が高くなり、それでもなんとか売らなければならないと考えた業者が、大麦よりもコストの安い別の穀類を材料にし、重要な部分だけを大麦に頼る酒造りにシフトした結果、グレーンウイスキーが誕生したわけです。

なお、この頃にスコットランドのローランド地方で作られるようになったグレーンウイスキーは、実はウイスキーとして飲まれていたのではなく、ジンの原材料として使われていたのだそうです。今日からは考えられない成り立ちですが、とても興味深い歴史です。

ウイスキーと麦焼酎の話

ちなみに、ウイスキーに使われる二条大麦はビールの原料や麦焼酎の原料としても利用されます。

ウイスキーとビールとでは、蒸留酒と醸造酒の違いがあるので、製造工程が決定的に違いますし、出来上がるお酒のアルコール度数もかなり異なります。一方でウイスキーと麦焼酎は、共に蒸留酒ですし、お酒としてもどちらもある程度高いアルコール度数があって、割って飲むのが割と一般的になっている点で共通していますよね。

では、このふたつがどう違うのかというと、麦焼酎の場合は発酵させる時に麹を使います。麦芽を使うウイスキーとはこの点が決定的に異なります。そして、ここでは詳しく語りませんが、蒸留の仕方も異なります。

こういった違いを経て、ウイスキーと麦焼酎がには違いが生まれるのです!

まとめ

ウイスキーの原料について、というページでしたが、大分色んなお話をしてしまいました。お酒って飲もうと思えば一瞬で飲み干してしまえますが、こうして原料のことを理解してじっくり飲むと、私は少し美味しくなる気がします。

大麦だけを主に使ったモルトウイスキーと、穀類を色々使って作られるグレーンウイスキー、そのブレンドでできたブレンデッドウイスキー。この3つを理解すると、次は醸造所毎の得意不得意や、地域ごとの特色なんかにも目が行って更に面白くなってきますよ!

なにかしら読んでくださった皆様のウイスキーライフを向上する情報になれれば幸いです!

参考:
モルトウイスキーとは – コトバンク
モルトウイスキー原料の大麦にはどのような麦を使うのですか? サントリーお客様センター
原料は同じ。ウイスキーと麦焼酎 | 田苑スタイル
スコッチウイスキーの大麦品種 | WHISKY Magazine Japan
肥土伊知郎 第2回 「モルトウイスキーの原料は二条大麦。3年前から秩父産の麦を実験的に使っています」(島地 勝彦) | 現代ビジネス | 講談社(2/7)
オオムギ – Wikipedia
稲富博士のスコッチノート 第14章 グレーン・ウイスキー-その1 A.Coffeyまで [Ballantine’s]